記録に忠実

ミュゼふくおかカメラ館へ向かう途中、遠くに立山連峰が見えた。
この日は、雲ひとつない青空で、雪をかぶった山並みが美しかった。
立山連峰 / Tateyama mountain range


カメラ館で観たのは、”報道写真の先駆者 写真家 名取洋之助 展 NATORI YOUNOSUKE1910-1962”。
写真の展示だけではなく、名取洋之助が関わったグラフ誌(の表紙)などが壁一面に展示されており、写真展と言うよりは、名取洋之助という人が関わった仕事や活動と、それに伴う作品の展示という内容だった[1]


今回の企画展、タイトルに”報道写真の先駆者”という言葉が入っていた。その言葉から、何らかの事象に対するドキュメンタリー、特にその事象そのものに対する事実の記録[2]を積み重ねたもの、というような写真を期待して観に行った。そして、実際、そこに展示されていた写真は、そのようなドキュメンタリー性を感じる写真であった。

しかし、グラフ誌などの展示においては、写真単体で感じていたドキュメンタリー性とは異なり、何らかの思惑や方向性が先行しているのが垣間見えた。本来、グラフ誌とはそういうもので、編集者の考えを元に特集が組まれたりするものだが、プロパガンダとして利用されるようになると、あまり気持ちのよいものではない。
単なる記録であったモノ[3]が、タイトルやキャプション、組み合わされる他の写真や記事本文によってその域を超え、何らかの思惑や方向性を持たせられている。そして、その度合いが強くなりすぎているように感じられたからだ。

写真は、タイトル一つで大きく印象が変わる[4]し、書こうと思えばキャプションに嘘も書ける。
そんなひどいことにならないために、度を越さないように、あまり強い思惑を込めないように、自分が記録した写真に忠実であるように、気をつけていきたいと思った。

撮影データ

立山連峰 / Tateyama mountain range
福岡町, 小矢部市, 富山県 / Fukuoka, Oyabe, Toyama, JAPAN
Carl Zeiss Zeiss Ikon, C Biogon T* 2.8/35 ZM, Fuji NEOPAN 100 ACROS, 自家現像

更新情報

2016年4月4日
”報道写真の先駆者 写真家 名取洋之助 展”の展示に関するページが消滅したため、次のURLへのリンクを解除。
http://www.camerakan.com/special/year2013/Natori1910-1962/index.html

脚注

  1. もちろん、写真もたくさん展示されていたが。 []
  2. 思惑のない、そのままの記録。 []
  3. ここではモノ=写真。それ自体に思惑、思想などが無いもの。 []
  4. 例えば、Flickrのこれは、僕は肯定的な気持ちで”小さないたずら”というタイトルをつけているが、否定的に”台無し”というタイトルをつければ、それだけで意味が変わる。 []

著者

西尾 健(にしお たけし)
石川県金沢市在住の素人フォトグラファー。
ダメ人間で写真が好き。フィルムの魅力に引き込まれ、フィルムで撮り続ける日々。
このWebサイトでは、主に自分用のメモと記録を、写真と文を交えて記事にしています。

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