ほぼ毎日、どこへ行くにも携行しているミノルタ TC-1が、「F--」のエラー表示が出て撮影できなくなった。
正確に言えば全く撮影できなくなったわけではなく、撮影できたり、できなかったり、かと思えば撮影できたり、という一番イヤな状態である。
撮りたい時に撮れないなんて… そんなのカメラじゃない。
ということで、修理に出すことに決めた。
概要
ミノルタ TC-1が「F--」エラー表示が出て撮影できない問題について、ケンコーに修理を依頼した経緯と、その修理結果についてのメモ。
結論だけ言えば、「お気に入りのカメラは、修理して長く使うのが一番」ということ。
問題点
電源を入れた後、シャッターボタンを半押ししてピントを合わせようとすると、ボディ表示部(液晶表示部)に「F--」が表示され、ピントを合わせることができない。
ただし、絞りをF16に合わせた場合は「F--」が表示されず、正常に動作する。
使用説明書[1]に、
絞りレバーがレンズの各クリック位置に止まっていない状態でシャッターボタンを押すと、ボディ表示部にF--と表示され、シャッターも切れません。
と記載されている通り、「F--」の表示が出た場合には何をやっても撮影できない。
何回かに一回程度の割合で「F--」の表示が出ず正常に撮影できることもあるが、これといった規則性もなく使用に耐えない。
なお、この問題が発生した原因については特に心当たりはなく、落下などの強い衝撃を与えたこともない。
何度か小雨や雪の日に使ったこともあるが、ここしばらくは晴天時のみの使用であった。
修理依頼から受け取りまでの流れ
2012.10.30
ケンコーのコニカミノルタカメラ修理相談窓口へ、電話にて修理を依頼。
ケンコーのWebサイト、フィルムカメラ修理料金情報 - 株式会社ケンコー・トキナー">フィルムカメラ修理料金情報(http://www.kenko-tokina.co.jp/konicaminolta/price_film_camera.html リンク切れ)では、修理料金の目安が25000円となっているが、電話で聞いた話だと、軽修理なら18000円に部品代と送料を加えた20000円くらいからということであった。
作業の内容(分解と組立)によって値段が上がっていくとのこと。
2014.4.2 追記
修理料金の目安について、ツイッターで
@jpskenn お返事が遅くなってしまい恐縮です。
コニカミノルタの製品についてですが、全般的に修理対応の年限外となり、修理部品の在庫がない場合も生じております。そのため、一律での表記を取りやめ、個別にお電話口にて対応しております。http://t.co/SN09nKRvE5— Kenko Tokina Slik (@Kenko_tweet) March 18, 2014
と回答をいただいたように、ケンコーのWebサイトに掲載されなくなったため、電話で問い合わせた。
料金的には、以前修理したときから大きな変化はなし。
修理料金は、以下の合計となる。
- 工賃:
- 分解、内部の部品交換の工賃: 18000円
- 外装の大きな破損や水没など重修理となった場合の工賃: 27000円
- 部品代: 別途
- 送料: 1500円(日通航空による自宅までの引取サービスを含む、往復送料)
軽修理なら、部品代を入れて20000円ちょっとくらいだと思われる。
なお、2015年10月まではTC-1の部品を保有をしておくそうなので、何かあれば早めに対応した方が良さそう。
2012.10.31
日通航空により、カメラ引き取り。
2012.11.01
ケンコーのサービスセンターに荷物到着。
2012.11.08
ケンコーから修理見積りの電話あり。
- 部品代 4100円
- 技術料 18000円
- 送料 1500円
で、合計24780円。
シャッター不具合のため、シャッターユニットの交換によって修理するとのこと。
2012.11.9
ケンコーから修理完了の電話あり。
11日に到着予定。
2012.11.11
荷物受取。
修理結果
シャッターを半押しした際に「F--」表示が出ずにピント合わせが行われ、正常にシャッターが切れることを確認。
気がついた範囲では、指摘した不具合の修理に加え、各部清掃(レンズ, ファインダー接眼部, ファインダー測距部, AF補助光発光部など)と、レンズ後部付近の反射防止板の植毛剥がれ[2]の修復が行われていた。
感覚的な話だが、レンズシャッターの動作音が、多少硬く高い音になったような気がする。
以前は「ノチッ」というような音だったのが、「カチッ」という歯切れよくしっかりした音になっている。
部品の角が取れる前の状態というところか。
修理明細書に記載されている内容は次の通り。
- 診断結果
シャッターの不具合を確認いたしました。- 処置内容
部品交換を致しました。
ピントの点検を致しました。
AFの点検を致しました。
露出の点検を致しました。
フィルム給送の点検を致しました。
各釦機能の点検を致しました。- 交換部品
シャッターユニット- ご請求金額
部品代合計 4100円 技術費 18000円 運送代 1500円 小計 23600円 消費税 1180円 合計 24780円
テスト撮影
雨の日が続き、なかなかテスト撮影に出れなかったのだが、少し晴れ間が覗く日があったのでリバーサルフィルム(富士フイルム プロビア100F)にてテスト撮影を実施。
撮影中、「F--」エラーが発生することは一度もなく、正常に撮影することができた。
撮影結果から、露出, ピント, フィルム給送などに問題がないことを確認した。
4枚目の”雲の切れ間”のみマニュアルフォーカスで無限遠にセット。他はオートフォーカス。
F3.5〜F8で撮影。たまに超自動露出が発動した可能性あり。
まとめ
今回の修理で学んだことは、「お気に入りのカメラは、修理して長く使うのが一番」ということである。
修理結果
問題の箇所は修理され、以前の機能を回復した。
ライトボックス上のフィルムをルーペで観察していると、以前に比べてクリアに写るようになったように見える。
まぁ、それはたぶん気のせいだとしても、それだけの描写をするカメラが手元に返ってきたことを嬉しく思う。
「修理して良かった」と思わせる修理結果である。
修理日数
カメラ引き取りから手元に返ってくるまで、日数にして12日、休日を除いた営業日では7営業日であった。
カメラ引き取り後、ケンコーにカメラが到着してから修理見積もりの連絡まで6営業日かかっており、土日を挟んだため随分待たされた気がしていたが、偶発的に発生する問題について、しっかりとした検査と調査を行った結果、それだけの日数がかかったのだと考えている。
その結果、問題の原因を特定し、的確な修理[3]が行われたと考えている。
修理料金
24780円という修理料金は、安くはないが、かと言って高すぎるわけでもない、絶妙な価格である。
が、TC-1というカメラに惚れ込んでいるならば、各部の点検なども含めて考えると十分に安いと思う。
見積もりが25000円弱であったので迷わず修理を依頼したが、もし30000円を超え35000円などの見積もりであれば、修理は依頼しなかったかもしれない。
というのも、2012年11月現在のTC-1の中古価格相場は、30000円〜50000円程度であり、修理料金と変わらない値段で手に入れることができるためであり、もし見積もりが35000円を超えるようであれば中古を探そうと考えていた。
また、料金に関して悩んでいる際、富士フイルムのKLASSE WやKLASSE Sなどを新品購入[4]することも検討したが、自分の使い方においては、それらのカメラがTC-1の代わりを務めることはできない[5]と判断し、候補から外した。
2005年に生産終了になったカメラの修理をしたこと
こういったカメラの故障を機に、他のカメラに乗り換えるということもあろうかと思うが、TC-1を修理して使い続けることにした。
修理料金の項でも書いたが、他のコンパクトフィルムカメラでは、現行品, 販売終了品にかかわらず、要求する性能[6]を満たすもの[7]はあっても、自分の撮影スタイルではTC-1の代わりになるものは見つからない。
また、デジタルカメラでは、要求する性能を満たすもの自体が存在しない。
ということで、TC-1を修理して使い続けるのが、一番良い選択肢なのであった。
その他
指摘箇所以外の各部清掃と軽微な修復に関しては、他のメーカーでもしばしば行われているものだと思う。
特に作業の指定はしていないが、ファインダーの清掃などは言わなくてもやって欲しいという期待も少なからずあり、もしファインダーに埃が入ったままだったら多少ガッカリするところだが、今回は期待通りの気配り(便宜)で気持ち良いものとなった。
レンズ後部付近の反射防止板の植毛剥がれの修復は、該当箇所の反射防止板が交換されているようだし、細かい所までやってもらって感謝している。
その割に、フィルム確認窓からの光線漏れを、自分で不恰好にモルトを貼り替えて修理した所はそのままの状態であったが、もしかすると、植毛剥がれによって露出に影響が出るなどの問題があったため、ついでに修理してくれたのかもしれない。
関連書籍
更新情報
2013/3/17
引用元を追記。
2013/4/9
関連書籍を追加。
2013/8/4
修理料金の表のレイアウトを変更。
2014/4/2
修理料金の目安がケンコーのWebサイトに掲載されなくなったため、電話で料金を確認して追記。
2015/4/2
処置内容のリストの表記方法を変更。(内容に変更なし)
2016/3/20
引用部分、HTMLのciteタグの表記を変更。
2016/3/21
iframeタグの属性値に幅と高さを指定。srcをhttp://からhttps://に変更。
脚注
- ケンコーのコニカミノルタ製品アフターサービスのページからPDFをダウンロード可能。 [↑]
- 以前、レンズ後玉を清掃していた際に、無水エタノールをつけたシルボン紙が植毛部に触れたことで接着剤が溶け、植毛が数ミリほど剥がれて金属部分が露出してしまった。 [↑]
- 今回の修理ではシャッターユニット交換 [↑]
- 2012年11月現在、販売価格はどちらも40000円以下。KLASSE Sなら3万円台前半。 [↑]
- KLASSE自体のポテンシャルは高いと考えているが、KLASSEとTC-1とで、どちらが自分の撮影スタイルに合っているかという点においては、TC-1の方が上だったということである。 [↑]
- TC-1と同等のボディサイズで、TC-1と同等の写りをすること。 [↑]
- KLASSE S, KLASSE W, GR1など [↑]
たった今、TC-1が同じ状態になり、このページにたどり着きました。ちょっと値段は張りそうですが、僕も修理して使い続けようと思います。良い記事をありがとうございました。
>>匿名さん
(コメントがスパムに振り分けられていたので、解除しました。)
記事中にも書きましたが、TC-1の代わりになるカメラはTC-1以外に存在しない状況なので、多少値は張りますが修理するのが最良の選択だと思います。
こんにちわ
だめになってしまったコンタックスTVSの後継を探している時、ここにたどり着きました。デジカメ出現前はTVSのほかにミノルタXDが愛機だったので、TC- 1には興味を引かれました。部品保有期間が切れる前に何とか手に入れたいと思っています。
ふとしたきっかけでフィルムカメラに回帰をはじめつつあったところに貴重な情報をいただき、感謝申し上げます。
>>仙台よりさん
僕はTVSのジャンクを500円で買ってその日のうちにオシャカにしてしまったので、奇遇というかなんというか(汗)
いわゆる銀塩コンパクト機で実用になる候補は限られている(ミノルタTC-1、リコーGR1、フジKLASSEなど)ので、使い勝手や大きさなどの要件を満たすものを探すのがいいかもしれませんねぇ。
TVSに比べると「小さい」というのが一番大きい違いで、個人的な感想ですが機能的にはTVSよりも二回りくらい上のように思います。
ファインダーのホコリ混入は持病ですので(笑)そこはあまり気にせず、良い中古品とめぐりあいますように…
はじめまして。金子と申します。このたびは中古でミノルタ TC-1を購入しました。現像はまだしていないのですが、28mmレンズと広角なのですがポートレイト写真にも向いていますか?購入した際は、あまりにもコンパクトで上品なカメラなので驚きました。ネットで見るとTC-1の修理もできるのですね。もう20年くらい前のカメラなのでもう修理は無理なのでは・・・と思っていました。知りませんでした。リバーサルフィルムにも向いていますか?僕は、デジタルカメラよりフィルムカメラの方が好きです。なぜかというと、どんな写真ができあがって来るのか分からないのがワクワクするからです。最近はデジタルカメラ時代に押され、フィルム自体を置いているお店が少なくなってきているのが残念です。もうこのままでは銀塩フィルムの生産がなくなってしまうのではないのか・・・と思っているくらいです。僕は他にCONTAXのNXを15年くらいまえに購入し、今でも愛用しています。しかし重たい!!一眼レフカメラなので・・・その点TC-1はかばんの中でもいつも入れておくことができます。これからも大事に使っていきたいと思います。 デジタルカメラの小型の物は(NIKON COOLPIX P310)持っているのですが、撮ってもすぐにどんな写真かを確認でき、撮影しいていても面白く感じません。2年以上も撮影したものを現像せずに置いているくらいです。その場で確認できるので、現像せずに撮影すれば、そのままで現像していません。皆さま、フィルムカメラだけでなく、デジタルカメラをお持ちですか??
>> 金子 知広さん
ポートレイトもリバーサルも、まずは色々と撮影されてみたらいかがでしょうか。その上で、良いとか悪いとか、ああでもないこうでもない、とやるのがフィルムの愉しみの一つだと思います。撮る前から結果を気にするなんてのはデジタルすぎやしませんかね?
参考になるかわかりませんが、TC-1の写りは寒色系なので、それとどう付き合うかが鍵になったりならなかったりしちゃったりして…
修理に関しては「ミノルタ TC-1の修理に関する情報」をご覧ください。メーカー保有部品の関係で、故障箇所によっては修理できないかもしれません。