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Leica M6を使い始めて感じたこと


バスの車内で

2015年8月下旬から、Leica M6(ライカ M6)で撮り始めた。
初期テストを一通り済ませた後、さっそく2015年8月30日の戦争法案に反対する国会前大抗議行動で実戦投入し、満足できる撮影結果と確実な使用感を得た。

Leica M6で撮り始めて2週間と少し、フィルムを十数本撮った段階で、その使い始めに感じたことを書き留めておく。
(”雑感”として投稿した内容に加筆して再編)

目次


シダ, その形状

カメラの各部

カメラボディ

重さ

カメラを手にとってまず感じるのは、そのずしりとした重さ。Zeiss Ikonに比べて1.5倍程度の持ち重りがする。
レンズ、ストラップ、電池、フィルム(Zeiss Ikonはグリップも)を含めた重さは、M6が800g(→Flickr)でZeiss Ikonが745g(→Flickr)なので、違いは1.1倍も無いのだが…
なぜかずっしりと感じてしまう。

その重さは、ストラップでたすき掛けにして持ち歩いているときには気にならない。手に持った時にずしりと来る。

つや消しのブラッククロームという色のせいか高級感はあまり無く、シルバーの見栄えの良さには勝てない。しかし、引き締まった黒は目立たず、がっしりとして精巧な印象を受ける。軍艦部上面に何も書かれておらず、真っ黒なところも良い。

カメラの初期テストが済んだ頃、ボディ正面の”LEICA M6”の白文字を黒マジックで塗りつぶし、自分のカメラとして迎え入れた。
”Leica”の赤バッジは、とりあえずそのまま。

巻き上げレバーとシャッタースピードダイヤルの間や軍艦部の段差など、普段あまり触らない場所にホコリが溜まり、少し汚く見えることがある。

触感

カメラボディの手触りとしては精密さを感じる作りで、中身が詰まっているようにも、外装が厚いようにも思える。

カメラを右手でつかんだときに親指が自然と当たる裏蓋の右上部分、ここを押さえるとヒンジ付近が少し撓(しな)っているのか動いているのか、プチやコツという小さな音がするのが気になっていたが、Range Finder Forumの”leica m6 hinged back”というスレッドへの書き込みを見ると、ごく一般的に起こることで問題ないようだ。
カメラの他の部分に遊びやガタが無いだけに、ちょっと心配してしまった。

マウント

レンズを装着する際、Zeiss IkonよりもM6の方が明らかに硬く感じる。バヨネットマウントの摩擦が大きい印象。
2台所有するZeiss Ikonのそれぞれに差異はなく、M6だけが硬い。
レンズ装着が硬いだけで、ピント精度に明確な違いは感じないが、他のライカではどうなのだろうか?

Zeiss Ikonのボディキャップが、M6にはまらない。
ライカ純正ボディキャップ(#14195)に比べ、Zeiss Ikonのボディキャップ外径が1mm程度大きいため、レンズ脱着ボタンのガード部分に干渉する(→Flickr)。
良く見ると、ボディのマウントもZeiss Ikonの方が外径が1mm程度大きかった(→Flickr)。

Leicaのボディキャップ(#14195)は、当然、ぴったりの大きさである。


M6 + Leicaのボディキャップ(#14195)


M6 + Zeiss Ikonのボディキャップ

なお、エツミのライカMマウント対応ボディキャップ E-6553も、Zeiss Ikonのボディキャップと同様にレンズ脱着ボタンのガード部分に干渉することを確認済み。

フィルム巻き上げレバー

レバー先端のプラスチック部分の迎え角が可変するフィルム巻き上げレバーは、その素っ気ない見た目に反して非常に指掛かりが良く、高い操作性を持っている。
レバーを格納した(閉じた)状態からでも、すっと引き出せる。

個体差かもしれないが、巻き上げはちょっと重い。Zeiss Ikon比で1.2倍くらいの巻き上げ抵抗を感じる。Nikon FM3A比だと150%くらいで、スルッと巻き上がる感じではない。
だが、重すぎるというわけではなく、しっかりとした手応えでシャッと巻き上がり、何枚か連続で撮影しても何の問題もない。

巻き戻しクランク

左手の親指を軍艦部にかけ、人差し指から小指をボディ下部に当てて左手でボディを包み込むようにした状態でフィルムを巻き上げると、左手の親指付け根付近に、巻き戻しクランクがぐりんぐりんと当たってちょっと不快。
左手を下にした縦位置撮影でよく起きる。


エゾミソハギ

シャッター

シャッター音は”静か”や”上品”という感じではなく、写真機という機械が動作する音そのもの。”コトリ”や”トンッ”などというシャッター音で表現される非常に程度の良いM3などとは完全に別のカメラ。
撮影者として自分の耳ではっきりと聞こえる音量があるし、静かな場所で撮影者の近くにいればシャッター音に気がつくだろう。

そうは言っても、ガチャコンガチャコンうるさいというようなことは全く無く、落ち着いた音だ。
Zeiss Ikonは”パチャッ”というシャッター音の最後の”チャッ”が高く響くのに対し、M6は”パタッ”という感じの少し低い音で、余韻が少ない。ボディの重さや金属部分の厚みが効いているように思う。

シャッタースピードダイヤル

マニュアルには

Intermediate speeds can not be set.

と書かれており中間速度は設定できないはずなのだが、クリックストップの間に合わせると、正確さはさておき、中間速度でシャッターが切れる。
が、故障の原因になったりするから、これはやらない方がいいのかな?

2015年9月22日 追記
ライカ通信 No.4(→Google ブックス)に、中間シャッターが使えるとの検証結果が載っていた。
なお、低速側と高速側のシャッターが切り替わる1/8から1/15の間は使えない。

少し不便に思うのは、ダイヤルが360度回らないこと。Bと1/1000の間に見えない壁があり、ぐるんぐるんと回せない。
フィルムを巻き上げていると、B以外ではレリーズボタンに触れただけで露出計がONになるため、無駄に電池を消耗しかねない。鞄にしまう際にはBにセットしろとマニュアルにも書いてあるし、露出計の電源をさらりと切っておきたいときにちょっとだけ不便。

2016年4月22日 追記
Leica M6にはクラシックとも呼ばれる素のM6と、その改良・後継となるM6 TTLがあるが、それらのうち僕が手に入れたのは素のM6の方。
古いものをあえて選んだ理由は、シャッターダイヤルの回転方向、
「時計回りに回すとシャッタースピードが速く、反時計回りに回すと遅く」
という方向を、Zeiss Ikonと同じにするため。
Leica M6とZeiss Ikonの2台持ちで使うこともあると見込んで、とっさの時に間違えないようにしておきたかった。

シャッターレリーズボタン

シャッターレリーズボタンにほんのちょっと触れるだけで露出計がONになり、どこにも引っかかりのないまま、そのまますぅーっと奥まで押し込むとシャッターが切れる。
ストロークが少し深いため、そのままでは人差し指の先っちょを押しこむような具合になってしまい、安定感に欠ける。

ソフトレリーズボタンをつけると、カメラボディをしっかりとホールドしたまま、指の腹で押さえる感じでシャッターが切れるようになり、安定性と操作性が向上した。

レリーズロックが無く、フィルムを巻き上げた状態だといつでもシャッターが切れてしまうため、鞄に入れる際には少し気をつかう。ストロークの深さのおかげか、今のところ勝手にシャッターが切れてしまったことは無いので、まぁ大丈夫なようだ。
それよりも、ソフトレリーズボタンをつけると通常の位置より2mmほど頭が飛び出した格好になるため、鞄に入れる際はシャッタースピードダイヤルをBにセットし、露出計の電源を切るのを徹底している。


葉の上の露

ビューファインダー

視度補正レンズ

視度補正レンズ無しでは、ファインダー内、特にフレームラインがぼやけて見えていたが、ライカ銀座店-1.5-2.0-3.0の視度補正レンズを試した結果、-2.0の視度補正レンズでくっきりはっきりと見えるようになった。

ちなみに、Nikon FM3AやZeiss Ikonでも-2の視度補正レンズを使用。
普段から眼鏡は使用しておらず、裸眼のままで近くから遠くまで何の不自由なく見えているが、カメラのビューファインダー内だけは視度補正レンズを使わないとぼやけて見えてしまう。

フレーム

28mmのフレームは、目をアイピースにくっつけて奥まで覗きこんだときに見える全域とほぼ同じ範囲で、フレーム外は見えないと思った方が良い。上下左右全てのフレームを同時に見るのは難しく、無いよりマシだが常用するのはちょっと…といったところ。

35mmのフレームは、目をそれほどくっつけずにパッと覗いたときに見える全域と同じくらいの範囲で、フレーム外は少ししか見えない。Zeiss Ikonだとフレーム外が余裕を持って見えている。M6の35mmフレームとZeiss Ikonの28mmフレームが同じ具合に見えており、M6は狭く感じてしまう。

M6フレームのラインは太く、繊細さに欠ける印象を受ける。

50mmのフレームと、実際に写る範囲については、こちらの記事(→Leica M6の50mmで、余計なものが写り込む)を参照。

露出計

M6のビューファインダー下部に表示される三角LED(▶︎ ◀︎)では、適正露出の±1EV内の範囲しか読み取れない。1EV以上は、2EVでも3EVでも、どちらかの矢印が点灯したままになるだけなので、露出オーバーやアンダーのとき、何段の差があるのかを直感的に判断できない。
Zeiss Ikonのマニュアル露出では、ビューファインダー左部のシャッタースピード表示部に、適正露出と現在セットしているシャッタースピードが同時に表示されるため、どれくらいの差があるのかをパッと直感的に確認できる。

M6の良い所は、適正露出から±1EV内の範囲を、LEDの明るさを元に1/2EV単位で読み取ることができること。Zeiss Ikonはシャッタースピードが1段ずつの表示なので、1EV単位でしか読み取れない。

実際の撮影では、露出計はカラーネガとモノクロネガで撮る際に補助的に使っているのみで、リバーサルでの撮影時は別途単体露出計を使用しているため、内蔵露出計はこれで十分。

三角LEDは、薄暗い状況などにおいて眩しすぎるときがある。
が、撮影に集中しているときには、ほとんど気にならないのも事実。

二重像合致部

M6はパララックス補正に合わせて二重像合致部も動く、つまり二重像合致部が常にフレームの中心にあり、手が込んでいる。
Zeiss Ikonはフレームだけ動いて二重像合致部は動かないため、無限遠付近では二重像合致部がフレームの中心から外れてしまう。(だからといって、それが撮影に影響したこともない)

M6でよく問題として取り上げられる、左前方に強い光があるときに起きる二重像合致部のハレ現象は、確かに起きる。機械的、機構的な問題。
カメラボディを少し回転させ強い光が水平に入らないようにすれば簡単に回避できるので、ピント合わせで大きな支障となることはない。が、問題が無い方がいいなぁ。

見え具合

M6のビューファインダーは、しっかりとした作りで余裕の合格点。”撮ろう”という気にさせる見え具合である。
Zeiss Ikonの方が広範囲が見える上、すっきりと上品な見え方で気持ちが良いため、それに比べるとM6はやや見劣りする。


さっと横切る

使い勝手など

フィルム装填

簡単。1週間も使えば慣れる。

マニュアルの”ヒント(=Tip!)”には、

... and after a bit of practice you will find loading safe and simple.

と書かれており、ちょっと練習したらできるレベル。

ただ、外した底板をどこに置くのか、それとも置かずに持っているのかという問題はある。最初の頃はズボンのポケットに入れたりしていたが、暇そうにしている指で挟んでおく方法に落ち着いてきた。茶碗の持ち方と同様に、そのうち自然と最適化されるだろう。

初期によくあったフィルム装填の失敗は、1枚目までの巻き上げにおける失敗、つまりフィルムが巻き取りスプールに引っかからず、巻き上がっていかないこと。
その原因は、巻上げ室へのフィルム先端の入れ具合(入れすぎ/入れ足りない)か、フィルムがレールから大きくずれてスプロケットに噛み合わないことのようだ。

ビューファインダーの汚れ

ボディ前面、距離計とビューファインダーの窓とボディとの間に段差がなく平らになっているため、ふとした拍子にカラス面に指が触れてしまい、手の油などで汚してしまう。
Zeiss Ikonはボディ前面から1mmほど凹んだところにガラス面があるので、窓の近くを触ってしまった場合でも、指の腹がガラス面に触れにくく汚れることが少ない。

1/1000秒はおまけ

M6における1/1000秒は、1/500秒よりも高速だが1/1000秒よりも低速な、おまけ的シャッタースピードと考えておくのが幸せの秘訣。
1/1000秒は何らかの理由があって最高速でシャッターを切っておきたいときに使うのみで、厳密な露出を求める際は1/500秒までを使うようにし、後は絞りで調整するのが良い。実際、単体露出計で入射光を測光して決めた露出値に対し、1/1000秒では0.5EV程度のオーバーとなっている。

M6発売当時、カメラ雑誌に掲載された各種テストリポートでも、1/1000秒のシャッタースピードは工業規格の範囲内(±0.7EVだっけ?)だが、1/1000秒は出ておらず若干遅いという結果だった。


城の屋根, 城の壁

撮影に関して、気分的なところ

瞬間を撮影することを楽しむカメラ

リバーサルフィルムを2本撮り終えた時点で、”リバーサルフィルムの撮影はZeiss IkonのAEに任せておこう”という結論に達した。
ここ数年間、Zeiss Ikonの絞り優先AEでリバーサルフィルムを撮りまくってきたため、その撮影スタイルが体に馴染みすぎて、マニュアル操作でリバーサルフィルムを撮影するのはつらい。
操作もつらいが、あっ!と思った瞬間に撮れないのもつらい。

M6は瞬間を撮影することを楽しむカメラだと感じているので、モノクロかカラーのネガで撮ることが殆どになりそう。

前へ

ネームバリューのおかげか、機械としての神話的性能(今現在では大した性能ではない)のおかげか、M6を持っていると、どんどん前に出て撮影できてしまう。
不思議と気後れしないというか、ジャーナリストの魂が宿るというか、なんだか自分が強くなったような気分になるカメラである。Zeiss Ikonではこれほどまでの高揚感は感じたことがなかった。

”前へ出る”というのは、他人に迷惑をかけるような悪い意味での話ではなく、自信を持って撮影に挑めるような心強さがカメラから体へ流れ込んでくる…というような具合で、自分で書いていても何が何だかよくわからないが、精神性にかなりプラスとなる作用があるということ。

ピント合わせが変わった

Zeiss Ikonでは、フォーカスリングのローレットを左右から親指と人差し指でつまんでピントを合わせることがほとんどだったが、M6ではフォーカスリング下部のぽち(=ちょぼ、でっぱり、ノブ)を人差し指一本で操作してピント合わせすることが増えた。

これまでの左手にカメラを乗せる持ち方から、左手をカメラ下部に引っ掛けて右手と合わせて挟み込む持ち方に変わっている。
側面が直線的なZeiss Ikonと、丸みのあるM6とのカメラの形状の違いでこうなっているのかもしれない。

緩やかなまがり道

関連記事

更新情報

2015年9月12日
書き忘れていた写真のキャプションを追加。
2015年9月19日
文言統一。「ピントリング」を「フォーカスリング」に。
2015年9月22日
中間シャッターについて追記。
2016年1月21日
マウントキャップの項目に写真とアフィリエイトリンクを追加。
2016年3月18日
写真のキャプションの位置を調整。
HTMLタグ内、floatの解除し忘れを修正。
2016年3月21日
iframeタグの属性値に幅と高さを指定。srcをhttp://からhttps://に変更。
2016年4月22日
シャッターダイヤルの回転方向に関して追記。
2016年7月17日
”目次”と”関連記事”の項目を追加。
”フレーム”に関連記事へのリンクを追加。