2週間ほど前に撮影したフィルムを現像したところ、撮影した覚えのない写真があった。
家で使っている現像タンクは35mmフィルム2本用のタンクなので、1本撮影毎に現像するより、2本まとめて現像した方が準備などの手間が少ない。それで、1本目を撮影した後、2本目の撮影が終わるまで、長い時には2-3週間放置することがある。
今回現像したのは、そんな、しばらく放置されたフィルム。
現像は順調に進み、風呂場に吊るして乾燥させる。
フィルムを吊るし終え、どんな感じに写っているかを見ていると、1コマだけ全面がほぼ真っ黒になっているコマがあった。
カメラを鞄にしまうときに、シャッターボタンがどこかに当たって鞄の中でシャッターが切れてしまうことがたまにあるので、その時は(またやっちゃったかな〜?)と思ったくらいで、他の作業をしつつ乾燥が終わるのを待った。
数時間で乾燥が終わり、6コマずつにカットして、後はスキャニング。
とりあえず、全てのコマを機械的に[1]スキャンして選別は後から、と、まずはスキャンを済ませた。
そして、選別の段階で出てきたのが冒頭の写真。
何か、モワモワしたところに、糸くずのような変なものがたくさん写っている、というような感じである。
(なんだこれは?撮った覚えがないぞ…)
というのが最初の感想だった。
鞄の中でシャッターが切れたにしては、何かおかしい。
もし鞄の中でシャッターが切れたとしても、鞄の中はほぼ真っ暗であるから、その状態においてF3.5で4秒(最大)の露光をしたくらいでは、”ネガがほぼ真っ黒”というような撮影結果にはならない。
さらに、鞄の中であれば、レンズ前面から鞄の内側(裏側)の生地までの距離は数cm以内であるから、ピントの合った状態で具体的な何かが写るということもないだろう。
となると、鞄の外で不用意にシャッターを切ってしまったのだろうか?
糸くずのような部分はボケたりブレたりしているように見えるが、拡大してチェックすると、その中心にはくっきりとした芯があるし、モワモワした部分もそのモワモワの境界がはっきりしているように見える。
問題のコマ(17)の前後のコマを見ると、
前のコマ(16)は浅野川大橋で、次のコマ(18)は小橋である。
これを元に、(書いた端から暗号化されていくような、難読文字であることには目をつぶって…)撮影メモと照合すると、
そこにはカラスと記されていた。
これを見て、撮影時の記憶が一瞬にして蘇った。
どんよりと曇っていたあの日の夕方、一旦東山の方をまわってから、浅野川大橋を渡って主計町を抜け、浅野川沿いを歩いて帰ってきた。東山のあたりを歩いている時にはまだ明るかったが、ぶらぶらしているうちに日が暮れ、浅野川大橋を渡る頃には暗くなり始めていた。
そして、この問題のコマは、中の橋と小橋の中間くらいまで歩いてきた時、カラスの大群が寝床へ帰るために飛んできているところを撮ったものだ。
しかも、メインで使っていたZeiss Ikonがその時ちょうど電池が切れてしまい、慌ててサブのTC-1を鞄から取り出して撮ったということも思い出した。シャッターチャンス優先で、暗い空にカラスがシルエット的に写っている様子を思い描いて撮影したのであった。
結果としては、露出補正せずに撮影したことで、カメラのAEが暗い空を明るく補正しシャッター速度が遅くなったため、ぼんやりとした抽象的な背景に、カラスの羽ばたきが被写体ブレした状態で写り込んだ奇妙な写真になった。
確かにこの写真の撮影者は僕だが、こういう結果を意図して撮った覚えはないので、やはり、撮影した覚えのない写真だと思っている。
脚注
- スキャン自体はスキャナーが行うが、フィルムのセットや埃のチェックは僕が機械的な動作で黙々と… [↑]