やっつけ企画 パソコン用メガネをエミュレートしてみよう / How to emulate the glasses for PC work

概要

パソコン用メガネのことを、twitterで見て思い出しました。
20年以上も前、キューハチだ互換機だと言っていたような頃からそういうメガネはありましたが、使ったことはありませんでした。

そんなパソコン用メガネが最近話題になっているようで、そういえば広告をちょくちょく見るようになりました。
メガネメーカーのWebサイトを見ると、”青色の光をカットすることで目の疲れを低減”というような謳い文句が書いてあります。
そんなとき、
「モニタで青色が少なくなるように調整したら、メガネいらないんじゃないの?」
と、パソコン用メガネをエミュレートすることを思いつきました。

モニタをどのように調整をしたらエミュレートできるかを調べたので、ここに公開します。

免責事項

個人的に、「こんなもんじゃないか?」という低レベルな調査なので、あまり本気にしすぎないでください。

目的

パソコン用メガネを使用した場合と、見え方が同じになるようなモニタの調整方法を調べます。

パソコン用メガネとは?

パソコン用メガネとは何か?をざっくり説明すると、
紫外線域から青色域の光線(約500nmよりも短い波長)をカットするレンズのついたメガネ
といったところでしょうか。

メーカーによっては、ちらつきを抑えるなどの付加機能をつけていたりもしますが、そっちはオマケ的な感じです。

詳しいことはメガネメーカーのWebサイトで確認してください。
メガネメーカーの例:

調査

どの波長を、どれくらいカットするのか

”パソコン用メガネがカットする光線”、つまり、どの波長をどれくらいカットするかについては、メーカーのWebサイトに掲載されています。
メガネ(眼鏡・めがね) | Zoff(ゾフ) | Zoff PCの、”透過率イメージ図”がそれです。

まぁ、だいたいですけれも…

  • 400nm以下はスパっと切り落とされていて、紫外線はほぼ100%カット
  • 青色域(400-500nm付近)は30%カット[1](=透過率60-70%)
  • 緑色域(500-600nm付近)も、10-30%くらいカットされてる(=透過率70%-90%)
  • 赤色域(600nm以上)は、気にする程でもない

ということが読み取れます。

ひょんなことから

フィルムで写真を撮っている方ならご存知かもしれませんが、写真撮影用のフィルターというものがあり、撮影するレンズにかぶせて(ねじ込んだりして)使います。
紫外線をカットして日陰の青味を取るUVフィルターや、色味を変えるCCフィルター、色温度を変えるLBフィルターなどがあります。
これらは、特定の波長をどれくらいカットするのかによって、性能が変わってきます。

パソコン用メガネも、言わば一種のフィルターであり、富士フイルムのWebサイト、ハンドブック(ダウンロード) | 富士フイルムにある、FUJIFILM FILTER GUIDEを参考に、似たような特性を持つ写真用フィルターが無いか探してみました。

FUJIFILM FILTER GUIDEから同じようなグラフを探せば良いのですが、Zoff PCの”透過率イメージ図”の横軸は間隔が一定ではありませんから注意が必要です。
(なお、後からJINS PCのグラフも追加しましたが、こちらのグラフも横軸の間隔が一定ではありませんでした。[2]

その結果、似たような特性を持つフィルターが見つかりました。
FUJIFILM FILTER GUIDEの24ページにある、LBAフィルターです。
このLBAフィルターは、色温度を下げる(暖色系にする、≒黄色っぽくする)フィルターです。

Zoff PCの”透過率イメージ図”と、LBAフィルターのグラフを位置調整して重ね合わせると、次のようになります。

Graph: LBA Filter and Zoff PC / JINS PC glasses, Adjust and Overlaid
図1: LBAフィルターとZoff PC / JINS PCメガネ, 位置調整して重ねあわせ[3]

LBA-6の特性が、一番近いようです。(Amazonでも取り扱っています。FUJIFILM 色温度変換フィルター LBAフィルター LBA 6 7.5X 1

モニタに見えているものを、LBA-6フィルターを通してみれば、パソコン用メガネで見ているのと同じように見えるはずです(たぶん)。
そして、LBAフィルターは色温度を下げるフィルターですから、モニタの色温度を調整してやれば、同じような見え方にできるはずです。

モニタをどう調整するか

どれくらい調整すれば、LBA-6と同じ効果があるのかについては、FUJIFILM FILTER GUIDEの23ページにその答えがありました。
LBA-6の”6”という数字を元に、色温度の差を計算することができる…
という詳しい説明は、FUJIFILM FILTER GUIDEを見てください。

結論

調査結果から、次のようにモニタの色温度を調整することで、パソコン用メガネをエミュレートすることができることがわりました。[4]

現在のモニタ色温度(単位はK=ケルビン)を x とすると、
パソコン用メガネ装着時の見え方をエミュレートする色温度 y は、
y=\cfrac{ 10^6 }{ \ \ 60 + \cfrac {10^6}{x} \ \ }
で求められる。

例:
現在のモニタ色温度が6500Kの場合、
パソコン用メガネ装着時の見え方をエミュレートする色温度は、約4676Kである。

現在のモニタ色温度と、調整後の色温度の対応表は次の通りです。

モニタ色温度(K)
現在 調整後
5000 3800
5500 4100
6000 4400
6500 4700
7000 4900
7500 5200
8000 5400
8500 5600
9000 5800

課題

モニタの色温度調整では、可視光領域の各波長における透過率の調整(=青色光カット)はできても、紫外線部分のカットを行うことができない。
パソコン用メガネは紫外線域(約400nm以下)の波長はほぼ完全にカットしており、もし、モニタから大量の紫外線が放出(射出?)されているとすれば、何らかの効果があるのかもしれません。

しかしながら、僕個人としては、窓から差し込む太陽の光の方が、よっぽど紫外線を含んでいるんじゃないかと思っています。

追加情報

LEDと蛍光管から出る紫外線の量

Twitterで、モニタ(中のバックライトは、LEDと蛍光管)から出る紫外線量についての情報をいただきました。
ありがとうございます。


リンク先は、CRT(いわゆるブラウン管)のモニタでも、LCD(液晶パネル)のモニタでも、紫外線はほとんど出てないという話です。


リンク先PDFには”白色LED光のスペクトル分布”のグラフが載っており、約430nm以下の波長はほぼゼロ。

ツイート中に出てくるLEDメーカーの日亜で、”LCD バックライト(携帯電話 / ノートパソコン / モニタ etc.)”の製品情報ページ(発光ダイオード(LED)/日亜化学工業株式会社)にある仕様書を見ると、バックライト用LEDにおいて、約400nm以下の波長はほとんど出ていないことがわかります。

ということで、パソコン用メガネを買わなくても、モニタの色温度を適度に下げるだけで、目にも体にも優しいモニタに調整できそうですね。

関連記事

当Webサイト内で、この投稿に関連のある記事は次のとおりです。

更新情報

2012/6/29

  • 結論:「現在のモニタ色温度と、調整後の色温度の対応表」を追加
  • 追加情報: LEDと蛍光管において、紫外線はほとんど出ないという情報を追加

2012/7/3

  • 更新情報を記事下部に移動

2012/7/5

  • 何が言いたいのかをはっきりさせるため、”追加情報”の締めの文に、「パソコン用メガネを買わなくても」の文言を追加

2012/8/6

  • 関連記事の項目を新規追加。
  • 関連記事に、”日本眼鏡技術者協会への、パソコン作業用メガネに関する質問と回答”を追加。

2013/2/8

  • ”What's JINS PC®?”へのリンク切れを修正。
  • 図1を、JINS PCのグラフを追加したものに差し替え。
  • 「JINS PCのグラフも横軸が一定ではない」という記述を追加

2013/3/25

  • 色温度の対応表が見切れることがあるので、縦横を変更。
  • 一部表記を修正。
  • リンク切れ箇所を削除。

2013/10/31

  • JINS PCへのリンクを、JINS PCのトップページに変更。

脚注

  1. 最大約50%カットっていうのは、どういうこと?380-500nmを平均したら約50%カットなんだろうけど、それに”最大”ってつけてるの?ちょっと何が何だか… []
  2. JINS PCのグラフ(パーフェクト比較ガイドのところ)では、400nmから500nmの間隔が倍。 []
  3. 当初は、Zoff PCだけを重ねあわせたグラフ(Flickrのこれ)を公開していましたが、2013/2/8にJINS PCのグラフを追加したものに差し替えました。 []
  4. パソコン用メガネを持っていないので、検証不可ですが… []

著者

西尾 健(にしお たけし)
石川県金沢市在住の素人フォトグラファー。
ダメ人間で写真が好き。フィルムの魅力に引き込まれ、フィルムで撮り続ける日々。
このWebサイトでは、主に自分用のメモと記録を、写真と文を交えて記事にしています。

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